日本はストレス社会。ストレス社会のなかではストレスを発散することばかりを考えてしまう。
しかし、ストレスは発散をさせることよりも、ストレスを軽くして精神的に成長させていくことが大事。
では、どうすればストレスを軽くして、ストレス耐性を高めることができるのでしょうか。
「スタンフォードのストレスを力に変える教科書」を参考にしながら、ストレスについてまとめます。
ストレスとは何か?
どうでもいいことにはストレスを感じない
日本はストレス社会というけれど、そもそもストレスとは何だろうか?
ストレスを辞書で調べると以下のような意味になる。
- 精神緊張・心労・苦痛・寒冷・感染などごく普通にみられる刺激(ストレッサー)が原因で引き起こされる生体機能の変化。
- 強弱アクセントで,強めの部分。強勢。
- 物体に加えられる圧力。
- 外的圧力に対する弾性体内部の反発力
~大辞林より引用~
また、本書ではストレスについて以下のように書かれている。
セリエは、ラットの実験で用いた方法をはるかに超える広範な枠組みで、ストレスを定義したのです。
「ストレスとは外部からの刺激に対する体の反応である」
つまりこの定義にしたがえば、毒物の注射や、外傷や、苛酷な実験環境などに対する反応だけでなく、行動や適応を要する日常的なできごとに対する反応までも含まれることになります。
一般的にはストレスは悪いものというイメージがあるが、ストレスとは外部からの刺激に反応することで、ストレス自体に良いも悪いもない。
例えば、コーヒーが嫌いな人にとってコーヒーの臭いはストレスになるが、コーヒー好きにとってはコーヒーの香りはリラックスになる。同じコーヒーでもストレスに感じる人もいれば、リラックスできる人もいる。
ストレスとは、外部からの刺激でしかない。しかし、ストレスを感じると疲れるのはなぜだろうか?、それは、自分が望んでいることや大切にしていることが脅かされているから。
「ストレスとは、自分にとって大切なものが脅かされたときに生じるものである」ストレスという言葉をこのように広く定義すれば、交通渋滞によるイライラにも、愛する人を亡くした悲しみにも当てはまります。ストレスで悩んでいるときに浮かんでくる考えや、感情や、体の反応にも当てはまるでしょう。ストレスを感じる状況への対処のしかたにも当てはまります。
さらにこの定義からは、ストレスのある重要な側面が見えてきます。すなわち、「ストレスと意義とは密接な関係にある」ということです、どうでもいいことに関しては、ストレスは感じませんし、有意義な人生を送りたいと思ったら、ある程度のストレスは付きものです。
実はストレスを消すのはとても簡単なこと。何も思わず望まず考えなければストレスを感じられなくなる。しかし、あなたの周りの人々が大きなストレスを抱えるだろう。
「ストレスは悪いもの」と思うことが1番のストレス
何も思わず望まず考えず、あるがまま生きていればストレスはかからない。しかし、何かを望み思い考えられるのは人間の能力のためストレスを避けることはできないが、ストレスを”悪いもの”から”良いもの”にイメージチェンジすることはできる。
「ストレスは悪いもの」と思い込むと以下の反応を示す。
実際に、「ストレスは害になる」と考えている人の多くは、ストレスへの対処法は「ストレスをなるべく避けること」だと言い、たとえばつぎのような行動を取ります。
- ストレスに向き合おうとせず、ストレスの原因についてなるべく考えないようにする。
- ストレスの原因に対処しようとせず、ストレスを紛らわそうとする。
- ストレスを紛らわすために酒などに逃げたり、依存したりする。
- ストレスの原因となっている人間関係や役割や目標に対して、努力したり、意識を向けたりするのをやめる。
しかし、「ストレスは良いもの」と捉えることができれば以下のような反応を示すことになる。
それとは反対に、「ストレスには役に立つ点もある」と考えている人の多くは、ストレスに対して積極的に対処すると答え、たとえばつぎのような行動を取ります。
- 強いストレスを感じるできごとが起きた事実を受けとめ、現実として認識する。
- ストレスの原因に対処する方法をしっかりと考える。
- 情報やサポートやアドバイスを求める。
- ストレスの原因を克服するか、取り除くか、変化を起こすための対策を講じる。
- 困難な状況をなるべくポジティブに考え、状況において最善を尽くす。
実は「ストレスを受けることは悪いこと」と思い込むことが一番の悪いストレスになる。よって、本書ではストレスを前向きに受け止めるとが大事だと紹介されている。
このようにストレスへの対処のしかたが異なると、結果には大きなちがいが表れます。困難な問題を避けたり否定したりせずに、正面から向き合えば、ストレスの多い経験に対処する能力をつちかうことができます、人生の試練を乗り越える自信もついてきます。
困ったときには相談し、助け合う仲間もできます。自分でどうにかできる問題には、手遅れになるまえにしっかりと対処できるようになります。どうにもできない状況は、成長するための機会として受けとめられるようになります。
しかし、仕事などでストレスを受け続け疲れ果てているなかで「ストレスは良いもの」と思うことは絶対にできない。よって、まずはストレス反応について理解をする必要がある。
ストレスを受けたときの3つの反応
ストレスとは外部からの刺激である。その刺激が自分にマイナスの影響を与えることだと、私たちの体では以下のようなストレス反応が起こる。
ストレスを感じたとき、わたしたちの体内ではコルチゾールとアドレナリンが分泌されます。それは「ストレス反応」と呼ばれる生物学的変化の一部で、ストレスの多い状況に対処するのに役立ちます。
ストレスを感じると、体内では心臓血管系や神経系をはじめとする多くのシステムに変化が生じます。
一般的には、このストレス反応がすべて「体に悪いこと」と思われている。しかし、ストレス反応は以下3つに細分される。
ストレス反応にはいくつかの典型的な種類があり、各反応によって体に起こる生物学的な変化が異なるため、ストレスへの対処方法もそれぞれ異なります。たとえば「チャレンジ反応」が起こると、自信が強まり、進んで行動を起こし、経験から学ぼうとします。いっぽう「思いやり・絆反応」が起こると、勇気が強まり、進んで人の世話をし、社会的な関係を強化します。
「ストレスは悪い」というイメージを変えるには、3つの反応を詳しく理解する必要がある。
闘争と逃走反応
動物は、命を及ぼすようなストレス(外圧)がかかると「闘争と逃走」の本能的な反応を見せる。
キャノンはハーバード大学医学部の生理学者で、1915年に「闘争・逃走反応」を初めて報告した人物です。
~中略~
キャノンが観察したとおり、動物が身の危険を感じると、動物の体内ではアドレナリンが分泌され、交感神経活性が高まります。心拍数が上がり、呼吸が速くなり、筋肉が緊張して、瞬時に行動を起こせるようになります。いっぽう、消化機能など緊急時には重要ではない身体機能は、低下するかいったん停止します。こうして体内のエネルギー貯蔵量を増やし、免疫系を活性化させることで、体は戦闘態勢を整えます。生き残るために必死なとき、体内ではこうした変化が自動的に起こるのです。
火事場の馬鹿力と言われるとおり、生命に関するストレスがかかると戦闘態勢となり最大限の力が発揮できるように設計されている。しかし、最大限の力を発揮するため持久力がもたない可能性がある。
生命に関する反応には1人ひとりに差がある。職場で上司から怒られることを「生命の危機」と感じるか感じないかは受け止め方により変わる。前者のような受け止め方をすると「戦闘と逃走反応」が出てきて、大きなマイナスのストレスを受けることになる。
チャレンジ反応
外部からのストレスを受けたとき、生命の危険を感じない場合には「チャレンジ」反応を見せる。
ストレスはあってもそれほど危険でない場合には、脳と体は「チャレンジ反応」という別の状態に切り替わります。「闘争・逃走反応」と同様に、「チャレンジ反応」が起こると力が湧いてきて、プレッシャーのかかる状況でもやるべきことをやれるようになります。心拍数は上昇し、アドレナリンが急増し、筋肉と脳にはエネルギーがどんどん送り込まれ、気分を高揚させる脳内化学物質が急増します。
しかし「チャレンジ反応」には、「闘争・逃走反応」とは異なる重要な点がいくつかあります。まず、集中力は高まりますが、恐怖は感じません。数種類のストレスホルモンの分泌される割合も異なり、なかでもDHEAの割合が高くなることは、ストレスから回復したり学んだりする助けになります。そのおかげで、ストレス反応の成長指数が上昇します。これはストレスホルモンの理想的な割合であり、ストレスの経験が役に立つか、害になるかを左右するひとつのポイントです。
ストレスを感じたとき、そのストレスに対して逃げるのではなく立ち向かおうとすることで、チャレンジ反応をする。チャレンジ反応をすることで、それを乗り越えるために必要なパフォーマンスを発揮することができる。
その結果、ストレスを乗り越えることで成長し、それ以降は同じようなことでのストレス反応は軽減される。
思いやり・絆反応
日本人にとって2011.3.11の東日本大震災は社会全体の大きなストレスだった。しかし、大震災後に多くの人がボランティア活動をしたのはなぜだろうか。それは、自然災害という大きなストレスを受けた後に「思いやり・絆」反応を見せたから。
ストレス反応が起こると、力が湧いてくるだけではありません。ストレスを感じると、多くの場合、人とのつながりを求める気持ちが強くなります。それはおもにオキシトシンというホルモンの働きによるものです。オキシトシンに「愛の分子」や「抱擁ホルモン」といった印象的な呼び名がついているのは、誰かを抱きしめたときに脳の下垂体から分泌されるためです。
社会全体が大きなストレスを受けたときに人がやさしくなれるのは、人間1人では生きていけないことを本能的に理解しているからではないだろうか。
ストレスを軽くする4つの方法
「ストレスは悪いこと」と思い込むことが1番のストレスとなる。また、ストレスを受けたときに「闘争・逃走反応」しかできないと、社会の中で人と協調することはできなくなる。
よって、ストレスを「悪いこと」から「良いこと」にイメージチェンジする必要があり、そのためにはストレスに対する習慣的な反応を変える必要がある。
あなたがストレスに対する反応のしかたを変えたいのなら、自信を持って問題に立ち向かったり、自分の力でがんばったり、引きこもらずに人の助けを求めたり、苦しみにも意義を見出したりしたいなら、これまでの習慣を変えるために、ストレスを感じるたびに「新しい反応のしかた」を練習することほどよい方法はありません。そうすれば、ストレスを感じている時間はすべて、あなたのストレス反応を転換するためのチャンスになります。
しかし、ストレス反応は無意識であるため、いきなりポジティブな反応に切り替えることはできない。よってストレス反応を意識的に変えるためには以下の経験が必要になる。
マインドセットを変える
マインドセットとは、思い込みや価値観など、今までの人生観を反映した信念のこと。
通常、マインドセットは世の中に対する見方にもとついています。たとえば、「世の中は安全ではなくなってきている」「お金があれば幸せになれる」「すべてのできごとは起こるべくして起こる」人間は変われない」など。
そのような考え方は、あなたが自分の経験をどのように受けとめ、どのような決断を下すかに、大きく影響する可能性があります。記憶や、思いがけない状況や、誰かの言葉などがきっかけとなって、自分のなかの思い込み(マインドセット)が強化されると、考え方も、感情も、人生に対する向き合い方も、ことごとく左右されるようになります。
「ストレスは悪いこと」と思い込むのもマインドセットのひとつ。まずはそのマインドセットを変える必要がある。今までマインドセットを新しいマインドセットに変えていくには、以下の3ステップを行うこと。
- Step1 新しい考え方を学ぶ
- Step2 新しい考え方を取り入れ、実践するためのエクササイズを行う
- Step3 自分が学んで実践したことを、ほかの人たちと分かち合う機会を持つ
ストレスと向き合う
強いストレスを「悪いストレス」と思い込むと「闘争・逃走」反応が起こる。しかし、「闘争・逃走」反応は本能的な行動になるため理性が伴わず、社会のなかでうまく立ち回れなくなる。
よって、マイナスの強いストレスを受けたときは「チャレンジする機会」と捉えることで「チャレンジ反応」を示すようになる。
ストレスを感じたときにどのストレス反応が起こるかによって、その経験からなにを学べるかも変わってきます。「脅威反応」が起きると、脳は脅威に対して敏感になります。脅威を敏感に察知することで、また同じようなストレスを感じたときに、すばやく反応できるようにするためです。「脅威反応」が起きたあとの脳では、脅威を察知する脳の領域と、生き残るための対処行動をつかさどる領域との連携を強化するために、神経回路のつなぎ換えが行われます。
これに対し、ストレスを感じたときに「チャレンジ反応」が起きた場合は、脳はレジリエンスを学びます。それは、DHEAや神経成長因子などのレジリエンスを強化するホルモンが分泌されるせいでもあります。「チャレンジ反応」が起きたあとの脳では、ストレス時に恐怖を抑制し、やる気を高める働きを持つ、前頭前皮質の領域間の連携を強化するために、神経回路のつなぎ換えが行われます。このようにして、「チャレンジ反応」が起きた場合は、ストレスを経験したことによって、ストレス免疫ができる可能性が高くなります。
このことから、マイナスのストレスを受けたときほど、ストレスと向き合い「チャレンジ」することが大切で、チャレンジを繰り返すことでストレスに対しても精神的に強くなれる。
人とのつながりを意識する
マイナスのストレスを受けたとき、1人だけがつらい状況になっていると思い込み、孤独を感じたり、他者の救いの手を拒んだりしてしまうことがある。それは「これ以上、傷つきたくない」という思いが根底にあるから。
しかし、独りになることで他人から傷つけられることから逃げられるが、現実はなにも変わらず、違うストレスを感じるもの。強いストレスを受け孤独を感じるときほど「人とつながり」を意識することストレスは和らいでいく。
この研究結果から学ぶべきことはふたつあります。ひとつは、身近な人が苦しんでいるときに、意識をどこに向けるかによって、わたしたちの体に起こるストレス反応はちがってくるということです。相手をなぐさめたり、助けたり、いたわったりすることに意識を集中すると、わたしたちは希望やつながりを感じます。しかし、自分のもどかしさを解消することばかりに気を取られていると、恐怖から逃れられなくなってしまうのです。
もうひとつは、わたしたちは小さな行為によって、自分の体を勇気の出る状態にできるということです。この実験では、痛い思いをしている家族や恋人を励ますために、手をにぎってやることでした。ふだんの生活でも、このように小さなことで相手とつながる機会はたくさんあります。
あなたが悩んでいるのが自分自身のストレスでも、あるいは身近な人が苦しんでいるのを見守っていることだとしても、希望を見出すための唯一の方法は、逃げることではなく、人とつながることです。思いやりと絆を大切にして向き合えば、相手の助けになれるだけではなく(もちろん、それが大事なことですが)、自分のためにもなります。
ストレスを成長のエネルギーにする
マイナスの強いストレスを受けたとき、大きな壁が立ちはだかり「人生もうダメだ」と思うもの。しかし、マイナスにはプラスの側面が必ずあるのが自然摂理。
強いストレスを受けたときほど、ストレスを受けた理由を明確にすることで、自分が大切にしていることに気づくことのきっかけになる。
重要なことに、ストレスのそのような効用に注目すれば、学びと成長に役立つことが、研究でも明らかになっています。ストレスに負けずに成長する勇気を奮い起こすには、「この苦しみからも、きっとなにか得られるものがあるはずだ」と信じる必要があります。そして、困難な経験によって成長を遂げたときには、自分のなかに前向きな変化が起こっていることに気づき、喜ぶのが大事です。
自然界の流れのなかに順境や逆境はない。順境や逆境が存在するのは私たちの心のなかだけ。物事が順境のときは、何かを考えたり気づいたりすることはできないが、逆境のときほど考え気づけることが多いもの。
苦しみのなかにもよい点を見出せる人たちは、ストレスに対する体の反応が健康的で、回復も早いことが実験によってわかりました。
以上の理由で、「ベネフィット・ファインディング」(逆境のなかにも、よい点や得るものがあると考えること)は、根拠のない魔術的思考とはまったく異なり、うつ病や心臓病のリスク低下、免疫機能の強化、結婚生活に対する満足度の向上など、さまざまな効果につながるのです。
逆境のときほど、自分が大切に思っていることに気づいていこう。それがストレス耐性を高めることであり、人間としての成長につながることだから。
まとめ
「スタンフォードのストレスを力に変える教科書」はストレスの感じ方を再考させてくれる本。
「ストレスは悪いもの」という今までの固定観念からストレスは活かせるものであり、自分を変え成長させていくには必要なものであることを、様々な実験結果をとおして学べる。
ストレス社会の日本だからこそ「自分にとってのストレスは何か?」を考えるきっかけになる本です。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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