「自分が嫌い」「性格を変えたい」と悩まれていませんか?
しかし、自分を嫌っていても性格を変えても何も変わりません。
これまでの人生がうまくいかなかった原因は、自分や性格のせいではなく、誤った思い込みにあるかもしれません。
論理療法は、誤った思い込みに気づき、新しい認知をつくりだす方法です。
論理用法とは
「アルバートエリス」は、アメリカの臨床心理学者で論理療法の考案者。
論理療法の基本は、人は日常生活で困難なことにぶつかった時、生まれながらにその問題をうまく解決できる力をもっている、という考え方です
一般的な心理療法では脳内物質や心に問題があると捉え、その問題を解消することが目的になっている。しかし、論理療法では問題をうまく解決できる力(考える力)を育てていくことに目的が置かれている。
論理療法には、以下4つの効果がある。
- 心の奥深くで、思考の変化を起こしていく。
- 今、目に見えている症状をよくしていく。
- 他の情緒的な問題を解決していく。
- かつての悩みや不安はめったによみがえらず、起こった場合にも、論理療法の手法を効果的に使えるようにしていく。
うつ病もそうだが、うつ病により落ち込んだ心を回復させることと、うつ病になってしまう原因を解決することは、まったく別のアプローチ。
落ち込んだ心を回復させるには、一般的な心理療法や抗うつ薬が有効になり、うつ病になってしまう原因を解決するには、論理療法が有効になる。
性格は変えられない
人間関係がうまくいかないとき、問題の原因は「自分の性格」にあると考える人が非常に多い。
例えば、おとなしい性格の人が、人間関係でうまくいかないとき「おとなしい性格のせい」と考えてしまい、自分の性格を変えようとする。
「性格」というのは、強い遺伝的な傾向を含みます。例えば内向性や外向性のように。非常に努力すれば、ある程度このような傾向も変えることはできます。
でも、完全には変えられません。ですから、自分の基本的な「性格」については、むしろそれを受け入れていくとよいのです。
残念ながら性格は変えられない。それでも、無理して性格を変えようとすると、最後は自分が嫌になる。
なぜならば、「性格を変えたい」という思いは、強力な自己否定からはじまっているから。
あなたが抱えている悩みや問題に、あなたの性格は一切関係ない。あなたの性格は「あなたらしさ」のひとつ。
人生を変えたいと思うのであれば、まずは性格を受け入れるところからはじめる。
では、悩みの原因が、自分の性格の問題でないとするならば、いったい悩みをどうやって解決すればいいのだろうか?
それは、今までの誤った思い込みに気づき、新しい考え方を取り入れていくこと。
間違った思い込みを見つける
悩みとは、理想と現実のギャップ。
例えば、「人から嫌われてはならぬ」という理想や考えがあると、「嫌い・苦手な人」との人間関係に悩むことになる。
人は、成功し、他の人から親切にされ、暮らしやすい環境に恵まれることを強く望みます。望むことは自由です。
しかし、こうでなければいけないと思い込む「ねばならぬ主義」には、要注意です。
こうした自分への命令が、幻滅やいらだち、そして「恐れ」を招くことになるのです。
なぜ「人から嫌われてはならぬ」と考えてしまうのだろうか?
1人ひとり性格が異なる人間関係のなかで「人から嫌われてはならぬ」という考えは、もしかしたら、非合理的な考えではないだろうか。
心が不安定なのはどういう時でしょう? 自分に反して行動している時です。
自分の健全な「好み」を、不健全で、非合理的な要求や義務に変えてしまっている時です。
自分が「嫌い・苦手」と感じる人なのに「人から嫌われてはならない」という非合理的な考えがあるから、心は不安定になる。
自分の「嫌い・苦手」という【感情を変えるのか?】、それとも「嫌われてはならない」という【非合理的な考えを変えるのか?】は自分で選択ができること。
では、感情ではなく、非合理的な考えを変えるにはどうすればいいのか?
自分の非合理的な考えを見つけ出す簡単な法則があります。まず、あなたの思い込みを見つけ出すことです。
人間は「思い込み」の生きもの。
例えば、下記の絵を最初に「老婆」と見れば「これは老婆である」と思い込む。
最初に「若い女性」と見れば「これは若い女性である」と思い込む。
人間は「自分の思い込んだとおり」に世界を見ている。よって、自分の思い込みが間違っていれば、世界も間違って見えてしまう。
自分の間違った思い込みを見つけ出すのがABC理論。
ABC理論で思い込みを理解する
ABC理論では、人間の思考や感情を下記にとおり別けて考える。
- 出来事・事実(Adversity)
- 信念・思い込み(Beliefs)
- その結果(Consequences)
人は、出来事と感情がイコールだと思い込んでいる。しかし、出来事と感情の間には信念・思い込み・価値観がある。
足を踏まれたことを事例に考えていく。
足を踏まれた(事実)→怒りを感じた(結果・反応)
足を踏まれたときに怒りを感じるのは、”気をつけるべき”・”謝罪するべき”という信念があるから。
よって、足を踏まれた直後に相手が謝罪をしたら許せることも多い。
足を踏まれた(事実)→謝罪された→許す・怒りが収まる(結果・反応)
上記の例では、足を踏まれたこと(事実)に怒りを感じたのではなく、謝罪がなかったことに怒りを感じたことになる。
謝罪がなかったことに怒りを感じたのは”謝罪をするべき”という信念を持っていたから。
足を踏まれたことを変えることはできないが、自分の信念・思い込みを変えることができたら結果を反応を変えることができる。
あなたは自分の感情や行動を選ぶことができます。
あなたの大事な目標が逆境によって阻まれた時、あなたは健全な感情を抱くか、不健全な感情を抱くか選択できます。
それだけでなく、前向きな行動をとるか、自滅的な行動をとるかも自分で選択できます。
あなたの望みや目標が不運なA によって阻害された後、C においてどのように反応するかは、あなた自身の選択にかかっています。
人間は、自分にとって望みどおりでない結果(C)に遭遇すると、その結果をつくった原因である出来事(A)を変えようとする。
しかし、望まない結果(C)になったのは、”あなたの思い込み”に原因があるのかもしれない。
起きた出来事や相手を変えようとするよりも、”あなたの思い込み”を変えることで、あなたは精神的に自由になれる。
合理的な反論と新しい考えを取り入れる
では、思い込み(B)を変えていくにはどうすればいいのか?
それはD (Disputing)反論することによってできます。
自分の破滅的なB (間違った思い込み)を認め、それが健全で合理的考えになるまで、反論するのです。
自分の思い込み(B)は無意識であるため、直接変えることはできない。無意識の思い込みを変えるためには、事実と結果を踏まえて”思い込み”に気づけたときに反論(D)をすること。
反論Dは、今までの自分自身との押し問答になる。反論の際は以下の3つを意識しながら反論意見を紙に書き出していく。
- 現実的に
- 合理的に
- 実利的に
例)なぜ、足を踏まれたことに私は怒りを感じるのがだろうか?
思い込みに反論を繰り返すことで、思い込み明確になってくる。
次に、反論意見を見ながら、E(Effective)の新しい考えや行動指針を紙に書きだしていく。その際は以下の3つを意識する。
- 今までとは違う考え方をする
- 今までとは違う感じ方をする
- 今までとは違う行動をする
例)足を踏まれないようにすれば、どうすればよかっただろうか?
ABC+DEを行うことで、思い込みは(B)は上書きされる
- 出来事・事実(Adversity)
- 信念・思い込み(Beliefs)
- その結果(Consequences)
- 反論(Disputing)
- 新しい考え(Effective)
最初に、出来事(A)とその結果・反応(C)から思い込みに(B)に気づくこと。
次に思い込み対する反論(D)を行い、新しい行動指針(E)を考えること。
最後に、実際に新しい行動を起こすことで、思い込みは上書きされる。
しかし、新しい行動がなかなか起こせない。なぜならば、今までの思い込み(B)を上書きしていくことに、人は恐怖を感じるから。
もし自分の思考・感情・行動を改善したいと思ったら、たとえ不快であっても、強制的に通常の行動とは違った行動をしなければいけないとしています。
このことは、自滅的な習慣に対抗する行動をとることによって、新しいよりよい行動習慣を獲得し、困難ではあっても確実に自分を変えることができるということです。
人間の思い込みは、過去の経験によりつくられている。
例えば、子供の頃にコーヒーを飲んだとき、「おいしい」と感じられれば「コーヒーはおいしいもの」と思い込む。逆に「苦い」と感じれば「コーヒーは苦いもの」とも思い込む。
そして、「コーヒーは苦いもの」という思い込みを「おいしいもの」に上書きするには、再びコーヒーを飲むという行動が必用になる。
経験を伴う行動を起こすことでしか、間違った思い込みを上書きすることはできない。
行動を積み上げるための意志力
人間は、よくもわるくも今の自分を保とうする。
よって、何か新しい変化を起こせば、必ず元の自分に戻ろうとする反作用も一緒に起こる。
その反作用に負けないために「間違った思い込みを変えていく」という意志力のもとで、行動を積み上げていく必用がある。
意志力とは、単なる意志、選択や決定ではありません。
その力とは、何かをしようとする決意、その方法に関する知識、自分を強制する実行力、たとえそれが困難であっても継続すること、そして以前の弱い自分に逆戻りしてしまっても、何度もこのプロセスを繰り返すことのできる力のトータルです。
論理療法は、ただ受けるだけの受動的な心理療法ではなく、自らを変えていくための、能動的な心理療法ともいえる。
最後に「エリック・バーン」の言葉を紹介する。
過去と他人は変えられない。しかし、いまここから始まる未来と自分は変えられる。
エリック・バーン
出来事(他人)(A)と結果(過去)(C)は変えることはできない。変えることができるのは間違った思い込み(B)のみ。
思い込み(B)が変われば、これからの結果(C)の感じ方が変わっていく。
まずは、自分の間違った思い込みの発見からはじめていこう。
まとめ
最近、本屋でアンガーマネジメントなどの「感情をコントロールする本」を数冊見かけました。
それだけ「感情をコントロールしたい」と思う人が多いのかもしれません。
私は論理療法を実践するようになってから、感情は「出来事(A)によって与えられているもの」ではなく「自らの思い込みや信念(B)によって作り出されている」ことに気づきました。
感じる情報と書いて感情です。
よって、感情は「怒り」として人にぶつけるのではなく、自分自身の間違った思い込みに気づき変えていく情報として活用することをオススメしています。
長文をお読みいただきありがとうございました。
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